○十和田地域広域事務組合職場におけるハラスメントの防止等に関する要綱
平成24年4月1日
制定
(趣旨)
第1条 この要綱は、人事行政の公正の確保、職員の利益の保護、職員の能率の発揮及び良好な職場環境の形成を目的として、ハラスメントの防止及び排除のための措置並びにハラスメントに起因する問題が生じた場合に適切に対応するための措置に関し、必要な事項を定めるものとする。
(令2訓令11・一部改正)
(1) ハラスメント セクシュアル・ハラスメント、妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメント及びパワー・ハラスメントをいう。
(2) セクシュアル・ハラスメント 他の者を不快にさせる職場における性的な言動及び職員が他の職員を不快にさせる職場外における性的な言動をいう。
(3) 妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメント 職場における次に掲げるものをいう。
ア 職員に対する次に掲げる事由に関する言動により当該職員の職場環境が害されること。
(ア) 妊娠したこと。
(イ) 出産したこと。
(ウ) 妊娠又は出産に起因する症状により勤務することができないこと若しくはできなかったこと又は能率が低下したこと。
イ 職員に対する妊娠、出産、育児又は介護に関する制度又は措置の利用に関する言動により当該職員の職場環境が害されること。
(4) パワー・ハラスメント 職務に関する優越的な関係を背景として行われる、業務上必要かつ相当な範囲を超える言動であって、職員に精神的若しくは身体的な苦痛を与え、職員の人格若しくは尊厳を害し、又は職員の職場環境を害することとなるようなものをいう。
(5) ハラスメントに起因する問題 ハラスメントのため職員の職場環境が害されること及びハラスメントへの対応に起因して職員がその勤務条件につき不利益を受けることをいう。
(令2訓令11・一部改正)
(適用範囲)
第3条 この要綱の規定は、常勤、非常勤及び性別にかかわらず、全職員に適用する。
(職員の責務)
第4条 職員は、ハラスメントをしてはならない。
2 職員は、ハラスメントを生じさせないために、別記第1(ハラスメントをなくするために職員が認識すべき事項についての指針)を十分認識して行動するよう努めなければならない。
(令2訓令11・旧第5条繰上・一部改正)
(監督者及び管理監督者の責務)
第5条 職員を監督する地位にある者(係長及び課長補佐(これらの同等職を含む。ただし、次項に該当する者を除く。)をいう。以下「監督者」という。)は、良好な職場環境を確保するため、日常の執務を通じた指導等によりハラスメントの防止及び排除に努めるとともに、ハラスメントに起因する問題が生じた場合には、迅速かつ適切に対処しなければならない。
2 管理監督者(十和田地域広域事務組合職員の給与に関する条例(平成10年十和田地域広域事務組合条例第21号)第8条第1項に規定する職にある職員をいう。以下「管理監督者」という。)は、職員がその能率を十分に発揮できるような職場環境を確保するため、監督者に対する指導等により、ハラスメントの防止及び排除に関し、必要な措置を講ずるとともに、ハラスメント又はハラスメントに起因する問題が生じた場合においては、必要な措置を迅速かつ適切に講じなければならない。
3 管理監督者は、ハラスメントに関する苦情の申出、当該苦情等に係る調査へ協力しなければならない。
(令2訓令11・旧第6条繰上・一部改正)
(研修等)
第6条 管理者は、ハラスメントの防止等のため、職員の意識の啓発及び知識の向上を図らなければならない。
2 管理者は、ハラスメントの防止等のため、職員に対し、研修を実施しなければならない。この場合において、特に、新たに職員となった者にハラスメントに関する基本的な事項について理解させること並びに新たに管理監督者となった職員その他職責等を考慮して必要と認める職員にハラスメントの防止等に関しその求められる役割及び技能について理解させることに留意するものとする。
(令2訓令11・追加)
(苦情相談)
第7条 ハラスメントに関する苦情の申出及び相談(以下「苦情相談」という。)が職員からなされた場合に対応するため、所属ごとに所属相談員を置くほか、事務局、消防本部庶務課、及び学校給食センター(以下「事務局等」という。)に苦情相談の窓口(以下「相談窓口」という。)を設置する。
2 前項に定めるもののほか、セクシュアル・ハラスメント及び妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントに関する苦情相談に対応するための相談員(以下「特定相談員」という。)を置くものとする。
3 職員は、所属相談員若しくは相談窓口又は特定相談員のいずれにも苦情相談(所属相談員への苦情相談にあっては、他の所属の所属相談員への苦情相談を含む。特定相談員への苦情相談にあっては、セクシュアル・ハラスメント及び妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントに関する苦情相談に限る。以下同じ。)することができる。
(令2訓令11・一部改正)
(所属相談員)
第8条 所属長は、当該所属の課長補佐以上(課長補佐がいない場合は、所属長)の職にある者の中から所属相談員を指名し、事務局次長、庶務課長又は学校給食センター所長(以下「事務局次長等」という。)に職名及び氏名を報告するとともに、職員に明示するものとする。指名を変更した場合も同様とする。
2 所属相談員は、苦情相談がなされた場合には、別記第2(ハラスメントに関する苦情相談に対応するに当たり留意すべき事項についての指針)に定めるところに従い、迅速かつ適切に対処するものとする。この場合において、苦情相談をした職員及び苦情相談に係る調査に協力した職員等が、他の職員から誹謗や中傷などの不利益を受けることがないように十分配慮するものとする。
3 所属相談員は、苦情相談に対処するほか、当該所属におけるハラスメントの防止に係る意識啓発に努めるものとする。
(令2訓令11・一部改正)
(特定相談員)
第9条 事務局次長等は、女性職員の中から特定相談員を指名し、職員に周知するものとする。指名を変更した場合も同様とする。
(相談窓口)
第10条 相談窓口は、職員からの苦情相談を受け、第8条第2項の処理を行うものとする。
(苦情相談の受付)
第11条 所属相談員、特定相談員及び相談窓口の職員(以下「相談員等」という。)は、ハラスメントによる直接の被害者だけでなく、他の職員により相談又は苦情が寄せられた場合においても、これに対応するものとする。
2 相談員等は、ハラスメントが生じている場合だけでなく、ハラスメントを未然に防止する観点から、その発生のおそれがある場合又はハラスメントに該当するか否か微妙な事案についても、相談又は苦情として受け付けるものとする。
3 相談又は苦情に対応した相談員等は、相談整理簿により、その内容を記録するものとする。
(相談又は苦情の処理)
第12条 相談員等は、前条の規定により苦情相談があった場合は、速やかに事実関係の調査及び確認を行い、処理に当たるとともに、その結果を相談整理簿により事務局次長等に報告するものとする。
2 事務局次長等は、前項の規定による報告を受けたときは、必要に応じて関係者から事情聴取及び事実確認を行い、相談又は苦情の解決を図るものとする。
(ハラスメント苦情処理委員会の設置)
第13条 ハラスメントに関する相談又は苦情に対し適切かつ効果的に対応するため、ハラスメント苦情処理委員会(以下「委員会」という。)を設置する。
2 委員会は、ハラスメントに関する相談又は苦情のうち前条の規定により事務局次長等から依頼された事案について事実関係を調査し、その対応措置を審議し、必要な指導助言を行うものとする。
3 委員会は、別表に掲げる者をもって構成する。
4 委員会に委員長を置き、事務局長等をもってこれに充てる。
5 委員長は、会務を総括し、委員会を代表する。
6 委員会の庶務は、事務局において処理する。
(令2訓令11・一部改正)
(プライバシーの保護等)
第14条 ハラスメントに関する相談又は苦情の処理を担当する職員及び委員会の委員は、関係者のプライバシーの保護及び秘密の保護を徹底し、関係者が不利益な取り扱いを受けないように留意しなければならない。
(関係職員への措置)
第15条 ハラスメントに関する相談又は苦情の事実関係の調査の結果、ハラスメントの事実が確認された場合は、必要に応じ懲戒処分を含む人事管理上の措置を講ずるものとする。
(事務分掌及び連絡調整会議への報告)
第16条 事務局等のハラスメントの防止対策の事務分掌は、次のとおりとする。
(1) ハラスメントの防止に関する情報の提供、研修及び講習会等の実施に関すること。
(2) ハラスメントを誘発するおそれのある庁舎内の掲示物等の防止に関すること。
2 事務局次長等は、前年度におけるハラスメントの苦情相談に関する状況について、十和田地域広域事務組合連絡調整会議に報告するものとする。
(その他)
第17条 この要綱に定めるもののほか必要な事項は、別に定める。
附則
この要綱は、平成24年4月1日から施行する。
附則(令和2年訓令第11号)
この要綱は、公布の日から施行する。
別表(第13条関係)
(令2訓令11・一部改正)
事務局長 | |
消防長 | |
教育部長 | |
事務局次長 | |
庶務課長 | |
学校給食センター所長 | |
教育総務課長 | |
特定相談員 (セクシュアル・ハラスメントに関する案件に限る。) | 若干人 |
その他必要と認める職員 | 若干人 |
別記第1(第4条関係)
(令2訓令11・全改)
ハラスメントをなくするために職員が認識すべき事項についての指針
第1 ハラスメントをしないようにするために職員が認識すべき事項
1 意識の重要性
ハラスメントをしないようにするためには、職員の一人ひとりがお互いの人格を尊重し合い、お互いが大切なパートナーであるという意識を持ち、性別により相手を差別しようとする意識をなくすこと。
2 基本的な心構え
職員は、ハラスメントに関する次の事項について十分認識しなければならない。
(1) セクシュアル・ハラスメント
ア 性に関する言動に対する受け止め方には個人差があり、セクシュアル・ハラスメントに当たるか否かについては、相手の判断が重要であること。
具体的には、次の点について注意する必要がある。
(ア) 親しさを表すつもりの言動であったとしても、本人の意図とは関係なく相手を不快にさせてしまう場合があること。
(イ) 不快に感じるか否かには個人差があること。
(ウ) この程度のことは相手も許容するだろうという勝手な憶測をしないこと。
(エ) 相手との良好な人間関係ができていると勝手な思い込みをしないこと。
イ 相手が拒否し、又は嫌がっていることが分かった場合には、同じ言動を決して繰り返さないこと。
ウ セクシュアル・ハラスメントであるか否かについて、相手からいつも意思表示があるとは限らないこと。
セクシュアル・ハラスメントを受けた者が、職場の人間関係等を考え、拒否することができないなど、相手からいつも明確な意思表示があるとは限らないことを十分認識する必要がある。
エ 職場におけるセクシュアル・ハラスメントにだけ注意するのでは不十分であること。
例えば、職場の人間関係がそのまま持続する歓迎会の酒席のような場において、職員が他の職員にセクシュアル・ハラスメントを行うことは、職場の人間関係を損ない職場環境を害するおそれがあることから、勤務時間外におけるセクシュアル・ハラスメントについても十分注意する必要がある。
オ 職員間のセクシュアル・ハラスメントにだけ注意するのでは不十分であること。
行政サービスの相手方など職員がその職務に従事する際に接することとなる職員以外の者及び委託契約又は派遣契約により同じ職場で勤務する者との関係にも注意しなければならない。
(2) 妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメント
ア 妊娠、出産、育児又は介護に関する否定的な言動(不妊治療に対する否定的な言動を含め、他の職員の妊娠、出産、育児又は介護の否定につながる言動(当該職員に直接行わない言動も含まれる。)をいい、単なる自らの意思の表明を除く。)は妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントの原因や背景となること。
イ 仕事と妊娠、出産、育児又は介護とを両立するための制度又は措置があること。
ウ 監督者として認識すべき事項
(ア) 妊娠した職員がつわりなどの体調不良のため勤務できないことや能率が低下すること、制度等の利用をした職員が正規の勤務時間の一部を勤務しないこと等により周囲の職員の業務負担が増大することも、妊娠、出産、育児又は介護に関するハラスメントの原因や背景となること。
(イ) 業務体制の整備など、職場や妊娠等をし、又は制度等の利用をした職員その他の職員の実情に応じ、必要な措置を講ずること。
例えば、業務体制の整備については、妊娠等をし、又は制度等の利用をした職員の周囲の職員への業務の偏りを軽減するよう、適切に業務分担の見直しを行うことや、業務の点検を行い、業務の効率化等を行うものとする。
エ 妊娠等をし、又は制度等の利用をする職員として認識すべき事項
(ア) 仕事と妊娠、出産、育児又は介護とを両立していくために必要な場合は、妊娠、出産、育児又は介護に関する制度等の利用ができるという知識を持つこと。
(イ) 周囲と円滑なコミュニケーションを図りながら自身の体調や制度等の利用状況等に応じて適切に業務を遂行していくという意識を持つこと。
(3) パワー・ハラスメント
ア パワー・ハラスメントは、職員に精神的若しくは身体的な苦痛を与え、職員の人格若しくは尊厳を害し、又は職員の勤務環境を害するものであることを理解し、互いの人格を尊重し、パワー・ハラスメントを行ってはならないこと。
イ 業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示、指導、調整等についてはパワー・ハラスメントに該当しないこと。一方、業務指示等の内容が適切であっても、その手段や態様等が適切でないものは、パワー・ハラスメントになり得ること。
ウ 部下の指導・育成は、上司の役割であること。また、指導に当たっては、相手の性格や能力を十分見極めた上で行うことが求められるとともに、言動の受け止め方は世代や個人によって異なる可能性があることに留意する必要があること。
エ 自らの仕事への取組や日頃の振る舞いを顧みながら、他の職員と能動的にコミュニケーションをとることが求められること。
オ 同一部署の職員間におけるパワー・ハラスメントにだけ留意するのでは不十分であること。
例えば、職員がその職務に従事する際に接することとなる他部署の職員との関係にも十分留意しなければならない。
カ 職員以外の者に対してもパワー・ハラスメントに類する言動を行ってはならないこと。
3 ハラスメントになり得る言動
(1) セクシュアル・ハラスメント
ア 職場内外で起きやすいもの
(ア) 性的な内容の発言関係
① 性的な関心、欲求に基づくもの
・ スリーサイズを聞くなど身体的特徴を話題にすること。
・ 聞くに堪えない卑猥な冗談を交わすこと。
・ 体調が悪そうな女性に「今日は生理日か」、「もう更年期か」などと言うこと。
・ 性的な経験や性生活について質問すること。
・ 性的な噂を立てたり、性的なからかいの対象とすること。
② 性別により差別しようとする意識等に基づくもの
・ 「男のくせに根性がない」、「女には仕事を任せられない」、「女性は職場の花でありさえすればいい」などと発言すること。
・ 「男の子、女の子」、「僕、坊や、お嬢さん」、「おじさん、おばさん」などと人格を認めないような呼び方をすること。
・ 性的指向や性自認をからかいやいじめの対象としたり、性的指向や性自認を本人の承諾なしに第三者に漏らしたりすること。
(イ) 性的な行動関係
① 性的な関心、欲求に基づくもの
・ ヌードポスター等を職場に貼ること。
・ 雑誌等の卑猥な写真・記事等をわざと見せたり、読んだりすること。
・ 身体を執拗に眺め回すこと。
・ 食事やデートにしつこく誘うこと。
・ 性的な内容の電話をかけたり、性的な内容の手紙・電子メールを送ること。
・ 身体に不必要に接触すること。
・ 浴室や更衣室等をのぞき見すること。
② 性別により差別しようとする意識等に基づくもの
女性であるというだけで職場でお茶くみ、掃除、私用等を強要すること。
イ 主に職場外において起こるもの
(ア) 性的な関心、欲求に基づくもの
性的な関係を強要すること。
(イ) 性別により差別しようとする意識等に基づくもの
① デュエットを強要すること。
② 酒席で、座席を指定したり、お酌やチークダンス等を強要すること。
(2) 妊娠、出産、育児、又は介護に関するハラスメント
ア 妊娠、出産、育児又は介護に関する制度等(以下「制度等」という。)の利用への嫌がらせ
(ア) 制度等の利用を理由に不利益な取扱いを示唆するもの
職員が、制度等の利用の請求等をしたい旨を上司に相談したことや制度等の利用の請求等をしたこと、制度等の利用をしたことにより、上司がその職員に対し、不利益な取扱いを示唆すること。
(イ) 制度等の利用の請求等又は制度等の利用を阻害するもの
① 職員が制度等の利用の請求等をしたい旨を上司に相談したところ、上司がその職員に対し、請求等をしないように言うこと。
② 職員が制度等の利用の請求等をしたところ、上司がその職員に対し、請求等を取り下げるよう言うこと。
③ 職員が制度等の利用の請求等をしたい旨を同僚に伝えたところ、同僚がその職員に対し、繰り返し又は継続的に、請求等をしないように言うこと。
④ 職員が制度等の利用の請求等をしたところ、同僚がその職員に対し、繰り返し又は継続的に、請求等を取り下げるよう言うこと。
(ウ) 制度等の利用を理由に嫌がらせ等をするもの
職員が制度等の利用をしたところ、上司又は同僚がその職員に対し、繰り返し又は継続的に嫌がらせ等(嫌がらせ的な言動、業務に従事させないこと又は専ら雑務に従事させることをいう。以下同じ。)をすること。
イ 状態への嫌がらせ
(ア) 妊娠、出産、育児又は介護を理由に不利益な取扱いを示唆すること。
(イ) 妊娠、出産、育児又は介護を理由に嫌がらせ等をすること。
(3) パワー・ハラスメント
ア 暴力・傷害
(ア) 書類で頭を叩く。
(イ) 殴ったり、蹴ったりする。
(ウ) 物を投げつける。
イ 暴言・名誉棄損・侮辱
(ア) 人格を否定するような罵詈雑言を浴びせる。
(イ) 無能なやつだと言ったり、土下座をさせたりする。
(ウ) 相手を罵倒・侮辱するような内容の電子メール等を複数の職員宛に送信する。
(注) 「性的指向又は性自認に関する偏見に基づく言動」は、セクシュアル・ハラスメントに該当するが、職務に関する優越的な関係を背景として行われるこうした言動は、パワー・ハラスメントにも該当する。
ウ 執拗な非難
(ア) 改善点を具体的に指示することなく、何日間にもわたって繰り返し文書の書き直しを命じる。
(イ) 長時間厳しく叱責し続ける。
エ 威圧的な行為
(ア) 他の職員の前で、書類を何度も激しく机に叩き付ける。
(イ) 自分の意に沿った発言をするまで怒鳴り続けたり、自分のミスを有無を言わさず部下に責任転嫁したりする。
オ 実現不可能・無駄な業務の強要
(ア) これまで分担して行ってきた大量の業務を未経験の職員に全部押しつけ、期限内に全て処理するよう厳命する。
(イ) 緊急性がないにもかかわらず、毎週のように土曜日や日曜日に出勤することを命じる。
(ウ) 業務とは関係のない私的な雑用の処理を強制的に行わせる。
カ 仕事を与えない・隔離・仲間外し・無視
(ア) 気に入らない部下に仕事をさせない。
(イ) 気に入らない部下を無視し、会議にも参加させない。
(ウ) 課員全員に送付する業務連絡のメールを特定の職員にだけ送付しない。
(エ) 意に沿わない職員を他の職員から隔離する。
キ 個の侵害
(ア) 個人に委ねられるべき私生活に関する事柄について、仕事上の不利益を示唆して干渉する。
(イ) 他人に知られたくない職員本人や家族の個人情報を言いふらす。
(注) アからキまでの言動に該当しなければパワー・ハラスメントとならないという趣旨に理解されてはならない。
4 懲戒処分
ハラスメントの態様等によっては、信用失墜行為、市民全体の奉仕者たるにふさわしくない非行などに該当して、懲戒処分に付されることがある。
第2 職場の構成員として良好な職場環境を確保するために認識すべき事項
職場環境はその構成員である職員の協力の下に形成される部分が大きいことから、ハラスメントにより職場環境が害されることを防ぐため、職員は、次の事項について、積極的に意を用いるように努めなければならない。
1 ハラスメントについて問題提起する職員をいわゆるトラブルメーカーと見たり、ハラスメントに関する問題を当事者間の個人的な問題として片づけないこと。
職場におけるミーティングを活用することなどにより解決することができる問題については、問題提起を契機として、良好な職場環境の確保のために皆で取り組むことを日頃から心掛けることが必要である。
2 職場からハラスメントに関する問題の行為者や被害者を出さないようにするために、周囲に対する気配りをし、必要な行動を取ること。
具体的には、次の事項について十分留意して行動を取る必要がある。
(1) ハラスメントやハラスメントに当たるおそれがある言動が見受けられる場合は、職場の同僚として注意を促すこと。
ハラスメントを契機として、職場環境に重大な悪影響が生じたりしないうちに、機会をとらえて職場の同僚として注意を促すなどの対応をとることが必要である。
(2) 被害を受けていることを見聞きした場合には、声をかけて相談に乗ること。
被害者は「恥ずかしい」、「トラブルメーカーとのレッテルを貼られたくない」などとの考えから、他の人に対する相談をためらうことがある。被害を深刻にしないように、気が付いたことがあれば、声をかけて気軽に相談に乗ることも大切である。
3 ハラスメントがある場合には、ハラスメントを直接受けていない者も気持ちよく勤務できる環境を作るために、ハラスメントと思われる言動が行われている状況について上司等に相談するなどの方法をとることをためらわないこと。
第3 ハラスメントに起因する問題が生じた場合において職員に望まれる事項
1 基本的な心構え
職員は、ハラスメントを受けた場合にその被害を深刻にしないために、次の事項について認識しておくことが望まれる。
(1) 一人で我慢しているだけでは、問題は解決しないこと。
ハラスメントを無視したり、受け流したりしているだけでは、必ずしも状況は改善されないということをまず認識することが大切である。
(2) ハラスメントに対する行動をためらわないこと。
被害を深刻なものにしない、他に被害者をつくらない、さらにはハラスメントをなくすことは自分だけの問題ではなく良い職場環境の形成に重要であるとの考えに立って、勇気を出して行動することが求められる。
2 ハラスメントによる被害を受けたと思うときに望まれる対応
職員はハラスメントを受けた場合又は自分が受けている言動がハラスメントではないかと考える場合には、その被害を深刻にしないために、次の事項について認識し、行動をとるよう努めることが望まれる。
(1) 嫌なこと、自分の意に反することは、相手に対して明確に意思表示をすること。
ハラスメントに対しては、毅然とした態度をとること。すなわち、はっきりと自分の意思を相手に伝えることが重要である。直接相手に言いにくい場合には、手紙等の手段をとるという方法もある。
(2) 一人で抱え込まずに、相談窓口や信頼できる人等に相談すること。
問題を自分一人で抱え込まずに、職場の同僚や知人等身近な信頼できる人に相談することが大切である。各職場内において解決することが困難な場合には、内部又は外部の相談機関に相談する方法を考える。なお、相談するに当たっては、ハラスメントが発生した日時、内容等について記録しておくことが望ましい。
(3) 当事者間の認識の相違を解消するためのコミュニケーション
パワー・ハラスメントにあっては、相手に自覚がないことも多く、よかれと思っての言動であることもある。相手に自分の受け止めを伝えたり、相手の真意を確認したりするなど、話し合い、認識の違いを埋めることで事態の深刻化を防ぎ、解決がもたらされることがあることに留意すべきである。
別記第2(第8条関係)
(令2訓令11・全改)
ハラスメントに関する苦情相談に対応するに当たり留意すべき事項についての指針
第1 基本的な心構え
職員からの苦情相談に対応するに当たっては、相談員は次の事項に留意する必要がある。
1 被害者を含む当事者にとって適切かつ効果的な対応は何かという視点を常に持つこと。
2 事態を悪化させないために、迅速な対応を心掛けること。
3 関係者のプライバシーや名誉その他の人権を尊重するとともに、知り得た秘密を厳守すること。
第2 苦情相談事務の進め方
1 苦情相談を受ける際の相談員等の体制等
(1) 苦情相談を受ける際には、原則として2人の相談員等で対応すること。
(2) 苦情相談を受けるに当たっては、苦情相談を行う職員(以下「相談者」という。)の希望する性の相談員等が同席するよう努めること。
(3) 相談員等は、苦情相談に適切に対応するために、相互に連携し、協力すること。
(4) 実際に苦情相談を受けるに当たっては、その内容を相談員以外の者に見聞きされないよう周りから遮断した場所で行うこと。
(5) 行為者とされる者又は第三者からの事実関係等の聴取を行う場合は、相談者の了解を確実に得た上で事務局等と連携して対応すること。
2 相談者から事実関係等を聴取するに当たり留意すべき事項
相談者から事実関係等を聴取するに当たっては、次の事項に留意する必要がある。
(1) 相談者の求めるものを把握すること。
将来の言動の抑止等、今後も発生が見込まれる言動への対応を求めるものであるのか、又は喪失した利益の回復、謝罪要求等過去にあった言動に対する対応を求めるものであるのかについて把握する。
(2) どの程度の緊急性があるのかについて把握すること。
相談者の心身の状態等に鑑み、苦情相談への対応に当たりどの程度の緊急性があるのかを把握する。
(3) 相談者の主張等に真摯に耳を傾け丁寧に話を聴くこと。
特に相談者が被害者の場合、ハラスメントを受けた心理的な影響から必ずしも理路整然と話すとは限らない。むしろ脱線することも十分想定されるが、事実関係を把握することは極めて重要であるので、忍耐強く聴くよう努める。また、相談員自身の評価を差し挟むことはせず、相談者の心情に配慮し、その主張等を丁寧に聴き、相談者が認識する事実関係を把握することが必要である。
(4) 事実関係については、次の事項を把握すること。
ア 当事者(ハラスメントの被害者及び行為者とされる者)間の関係
イ 問題とされる言動が、いつ、どこで、どのように行われたか。
ウ 相談者は、行為者とされる者に対してどのような対応をとったか。
エ 管理又は監督の地位にある職員等に対する相談を行っているか。
なお、これらの事実を確認する場合、相談者が主張する内容については、当事者のみが知り得るものか、又は他に目撃者はいるのかを把握する。
(5) 聴取した事実関係等を相談者に確認すること。
聞き間違えの修正並びに聞き漏らした事項及び言い忘れた事項の補充ができるので、聴取事項を書面で示したり、復唱したりするなどして相談者に確認する。
(6) 聴取した事実関係等については、必ず記録して保存しておくとともに、当該記録を厳重に管理すること。
3 行為者とされる者からの事実関係等の聴取
(1) 原則として、行為者とされる者から事実関係等を聴取する必要がある。ただし、ハラスメントが比較的軽微なものであり、対応に緊急性がない場合(パワー・ハラスメントにあっては、行為者とされる者に改善の余地があるもののパワー・ハラスメントとまではいえないようなものであり、対応に緊急性がない場合)などは、管理又は監督の地位にある職員の観察又は指導による対応が適当な場合も考えられるので、その都度適切な方法を選択して対応する。
(2) 行為者とされる者から事実関係等を聴取する場合には、行為者とされる者に対して十分な弁明の機会を与える。
(3) 行為者とされる者から事実関係等を聴取するに当たっては、その主張に真摯に耳を傾け丁寧に話を聴く、聴取した事実関係等を行為者とされる者に確認するなど、相談者から事実関係等を聴取する際の留意事項を参考にし、適切に対応する。
4 第三者からの事実関係等の聴取
ハラスメントについて当事者間で事実関係に関する主張に不一致があり、事実の確認が十分にできないと認められる場合などは、第三者から事実関係等を聴取することも必要である。
この場合、相談者から事実関係等を聴取する際の留意事項を参考にし、適切に対応する。
5 相談者に対する説明
苦情相談に関し、具体的にとられた対応については、相談者に説明する。
第3 問題処理のための具体的な対応例
相談員が、苦情相談に対応するに当たっては、ハラスメントに関して相当程度の知識を持ち、相談者からの話を丁寧に聴きながら、個々の事例に即して柔軟に対応することが基本となることは言うまでもないが、具体的には、事例に応じて次のような対処が方策として考えられる。
1 セクシュアル・ハラスメント
(1) セクシュアル・ハラスメントを受けたとする職員からの苦情相談
ア 職員の監督者等に対し、行為者とされる者に指導するよう要請する。
(例)
職場内で行われるセクシュアル・ハラスメントのうち、その対応に緊急性がないと判断されるものについては、職場の監督者等に状況を観察するよう要請し、行為者とされる者の言動のうち問題があると認められるものを適宜注意させる。
イ 行為者に対して直接注意する。
(例)
性的なからかいの対象にするなどの行為を頻繁に行うことが問題にされている場合において、行為者は親しみの表現として発言等を行っており、それがセクシュアル・ハラスメントであるとの意識がない場合には、相談員が行為者に対し、その行動がセクシュアル・ハラスメントに該当することを直接注意する。
ウ 被害者に対して指導、助言をする。
(例)
職場の同僚から好意を抱かれ食事やデートにしつこく誘われるが、相談者がそれを苦痛に感じている場合については、相談者自身が相手の職員に対して明確に意思表示をするよう助言する。
エ 当事者間のあっせんを行う。
(例)
被害者がセクシュアル・ハラスメントを行った行為者に謝罪を求めている場合において、行為者も自らの言動について反省しているときには、被害者の要求を行為者に伝え、行為者に対して謝罪を促すようあっせんする。
オ 人事上必要な措置を講じるため、事務局等との連携をとる。
(例)
セクシュアル・ハラスメントの内容がかなり深刻な場合で被害者と行為者とを同じ職場で勤務させることが適当でないと判断される場合などには、事務局等との十分な連携の下に当事者の人事異動等の措置をとることも必要となる。
(2) セクシュアル・ハラスメントであるとの指摘を受けたが納得がいかない旨の相談
(例)
昼休みに自席で週刊誌のグラビアのヌード写真を周囲の目に触れるように眺めていたところ、隣に座っている同僚の女性職員から、他の職員の目に触れるのはセクシュアル・ハラスメントであるとの指摘を受けたが、納得がいかない旨の相談があった場合には、相談者に対し、周囲の職員が不快に感じる以上はセクシュアル・ハラスメントに当たる旨注意喚起をする。
(3) 第三者からの苦情相談
(例)
同僚の女性職員がその上司から性的なからかいを日常的に繰り返し受けているのを見て不快に思う職員から相談があった場合には、同僚の女性職員及びその上司から事情を聴き、その事実がセクシュアル・ハラスメントであると認められる場合には、その上司に対して監督者を通じ、又は相談員が直接に注意を促す。
(例)
非常勤職員に執拗につきまとったり、その身体に不必要に触る職員がいるが、非常勤職員である本人は、立場が弱いため苦情を申し出ることをしないような場合について第三者から相談があったときには、本人から事情を聴き、事実が認められる場合には、本人の意向を踏まえた上で、監督者を通じ、又は相談員が直接に行為者とされる者から事情を聴き、注意する。
2 パワー・ハラスメント
(1) 相談者の話が事実であれば明らかにパワー・ハラスメントに該当すると思料される事例
相談者の了解を得て、速やかに事例を事務局等に知らせる必要がある。事務局等又は相談者の意向によっては、相談員も事実関係等の聴取の実施等に引き続き協力する。なお、相談者が事務局等に知らせることを望んでいない場合でも、相談者が自傷行為に及ぶ可能性がある場合、深刻な状況にあるとうかがわれる場合など、緊急性が高いと考えられる場合には、相談者自身は事務局等に知らせることを望んでいない旨も含めて、事務局等に連絡する必要がある。
(2) 相談者の話の内容が事実であるとしても、パワー・ハラスメントに該当するかどうか判断が難しい事例
(注) 以下の対処は、相談者がこれらの対処を行うことを希望していることが前提であり、相談者の意向を確認せずに相談員限りの判断で行ってはならない。
ア 当事者双方の主張を公平かつ丁寧に聴き、隔たりを埋める。
(例)
事務局等と連携して、行為者とされる者からの事実関係等の聴取及びそれを踏まえた相談者からの事実関係等の聴取を実施する(必要があればそれぞれ複数回実施する。)。その際、過去の事実関係を確認していずれの言い分が正しいのかを判定することを目指すのではなく、双方の主張を聴いて、認識の隔たりを埋めつつ、将来に向けて双方がとるべき対応について共通認識に到達することを目指す。
イ 第三者からの事実関係等の聴取を実施し、その結果を踏まえ、事務局等としての判断を示す。
(例)
アの対応を行っても当事者双方が共通認識に到達することが困難な場合には、第三者からの事実関係等の聴取を実施して、事実関係を明らかにした上で、事務局等としての判断を示し、必要な措置を行う。この段階においては、事例への対応は相談員から事務局等に完全に移行していることが多いと考えられるが、事務局等又は相談者の意向によっては、相談員も事実関係等の聴取の実施等に引き続き協力する。
(3) 相談者の話が事実であるとしても明らかにパワー・ハラスメントには該当しないと思料される事例
相談者の話の内容からすれば、明らかにパワー・ハラスメントには該当しないと思料される場合であっても、相談者が組織的対応を求めているときには、相談者の了解を得て、事例を事務局等に知らせる必要がある。一方、相談者が、相談員限りでの対処や相談員からのアドバイスを望んでいる場合には、業務遂行やコミュニケーションの在り方の見直しなどによる解決を助言することも考えられる。